暑くもなくて、涼しくもない。
窓を開けても、虫の声も風の音も聞こえなくて、
隣でひたすらに風を切り続ける扇風機の音しか聞こえない。
こんなに静かだと、今日がどんな日だったか、さっきまで何を考えていたかもわからなくなって、
すっかり消えてしまって、
ずっと頭の隅に張り付いていて、意識しないようにしていたことだけが、ぼやぼやと浮かんでくる。
ただただあやまることしかできなくて、あやまる機会を畏れている。
内に目を向けることには慣れてきたけど、内にしか目を向けられないのは、とてもこわいことだ。
まだ何の音もしない。


ハードボイルドにはなかなか手が出せなくて、
まだ読んでいなかった、川上さんの、光って見えるもの、あれは。を手に取った。
長編を読むのも、大きなストーリーのために頭を片付けるのにも、結構なエネルギーが必要で、ちょっと疲れた。
さくさくと手にするのも、勿体ないような気もするし。