仕事となると、自分でも驚くくらいイライラする。
自分の仕事にいらつくことはないけど、仲間内での折衝になると、瞬間的に胸が熱くなって、
内心動揺し抑えるのに必死で、何もなかったように黙っている。
そういうのは、どんなに隠していても言葉の端々や雰囲気に漏れ出るものだから、
きっとみんな気付いているんだろうけど、どうしようもなくて、距離をお互いに、少しずつひろげていく。
デスクワークでの他愛もない会話も、少し前ならなんとも思わずに加わって楽しめていたのに、
今は聞いているだけでもイライラするので、聞こえないふりをして黙々と仕事に向かう。
表情を消して、関わってくるな、という雰囲気を全面に押し出す。
わからない。
どうして、いつから、こうなってしまったのか。
これでいいのかすら、わからない。


しかたのない水 (新潮文庫)

しかたのない水 (新潮文庫)

装丁とタイトルで手にした本。
甘えのない生々しい言葉の数々に、胸を突き刺され、削ぎ落とされ、
どの話も読み終えて、泣きそうになりながら、弱く湿ったため息がもれた。
展開や結末の巧妙さより、思考の突き詰め方に魅せられることが増えた。
おそろしい本ではあるけれど、きっとまた次を、手にしてしまう。