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用事があったり気分だったりで何かと断り続けていた同期や後輩との飲み会に
ひさしぶりに参加して、彼らの初々しさに入った当時を懐かしく思って、
こんなに働いているのに、彼らに道を指し示す言葉が浮かんでこないから、
相変わらずなかなかにつまらない人間のままだなとしんみりした。
ビールで引けるクジで枝豆を当て続けたせいでだいぶ酔ってしまい、
1時過ぎに帰宅後水を枕元に置いて、なにもしないまま1日を終えてしまう。
4時頃、右手が燃えるように熱くなっていて、眠りを止めた。
手全体の皮膚がはじけるような痛みと、虫が薄皮一枚下で這い回っているような痒みが合わさったようで、
考えるよりも早く、意識も抜けたままで左手で何度も叩いていた。
荒れた小指のせいだとわかると、掻くのはよくないから、膝の間に強く挟んで朝までやり過ごす。
調子に乗って飲み過ぎたのがよくなかったのかもしれない。
ビールしか飲んでいなかったのに、水も多めに採ったのに、体を起こすと頭が痛かった。
昼間はきれいに晴れていたのに、帰り道ではうっすら雨が降っていて、
あたたかい霧のようで、気持ちいいとも感じられるはずなのに、
傘をささずに歩いていても、肌はカサカサのままで、そこに感覚を集中させると、渇いた呼吸が荒くなる。
ついこの間まで、手にしたパズルがどれもこれも合わさっていくように、
何もかもがうまく回っていたのに、
心は自分勝手でとても脆いものだと思うし、大きな流れのようなものを感じずにはいられない。
なかなか早く帰れる日がないけど、熱いお風呂に入りたい。
たくさん汗をかいて、わるいものを全部出してしまいたい。
今は、古くて汚いものをたくさん抱え込んでいるように感じる。
出してしまった後だって、何も変わらない自分が残るだけなのに、
根元がどんなになっているか見るのがこわいから、外ばかり見てる。
でも少しでも脱ぎ捨てて、軽い体に気持ちを乗せて動き続けていないと、
足下から、どんどん沈んでいってしまうような気がする。
- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 講談社
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