朝。
6時頃には目が覚めてしまったけど、こんな休日くらいは8時間は眠りたい。
うつらうつらとまた落ちて、10時頃には部屋があたたかくなっていて、
ふとんを出るのに苦労しなかった。


窓を開けたらすっかり晴れていて、外の空気がとても気持ちいい。
外から雪の落ちる音と、コンクリートをがりがりと掻く音。
気温が高いせいと、みんなで朝から雪かきをしてくれているおかげで、
道路の雪もすっかり解けている。
歩くのには全然支障がなくて、朝の風をきって、少しだけ走ってみた。


家の前で雪かきをしている人が、駅前のコンビニでバイトをしているおばちゃんで、
かるいあいさつと会釈をした。
今度話しかけてみよう。


大抵のことは、自分が思ったほどではなくて、
何かのせいだったり、誰かのおかげだったりで、何とかなってしまうものだ。
そして、知らない間に、自分もその中に一部として成り立っている。
知らないけど、そうなっている。
だから、思ったほどでもない。


夕。

アンノンに行くと、コーヒーブルースのかわいこちゃんを思い出すよ。


夜。
ハンバートのライブ。
産休前の東京はこれで最後。
遊穂さんは相変わらずのかわいらしさと、地に足が付いている安定感。
もうすっかり母の強さ。
アイラインのみの素顔が眩しい。
花柄のワンピースと、紺の帽子がかわいらしい。
誰かのプレゼントかな。
良成さんの口ひげも、寡黙なおじさん感がいい。
今求めてるライブは、ハンバートなのかもしれない。
どんな状況でもしっくりくる。
途中までしか聴けなかったけど、それでも充分に満たされた。


ゆっくりの時間が出来たから、ひさしぶりに夜の街を走った。
ライブで聴くアメリカの恋人は、空を飛ぶ夢のイメージ。
風で舞い上がりながら、野原も山もいくつも越えて、やがて海へ抜ける。
どこまでもどこまでも駆けてゆける。


走っている間、今日の想いを一度空っぽにして、もう一度整理し直す。
もう昔ほどに動揺はしない。
切ないとも甘酸っぱいとも違う、緑と青と紫の薄い色。
この記憶はいつか消えてしまうんだろうか。
消えるって、恐ろしい、寂しい。
走り終えて、電柱の文のところを思いっきり蹴る。
乾いた音がして、部屋に戻る頃には足の甲がぷっくり腫れていた。
何でもいいから何かを残しておきたくて、この傷と痛みが、ずっと治らないといいのに。