壁の高いところに掛かる時計。
僕の部屋にあるそれを何度も想像したけれど、結局未だにここにはない。


僕の部屋の時計はとても小さいものばかりで、
机の影の床に、パソコンに、できるだけ見えにくいところにひっそりと置いてある。
この場所では、できるだけ時間の経過を感じたくないと思う。
はっきりと、数字で、量で感じたくないと。
それがまして、頭の上の方で、この場所を統べるみたいに掲げられているなんて、
なんだか意識が薄れていくような、考えがすいとられていくような気分だ。
それに、ここはとても静かだから、夜にはきっと針の音がよく響くんだろう。
過ぎた時間を、ナイフで切り離していく、残りの時間を意識させる音。


風邪なのか、体が熱いこともあって、
今日は、食事も、展示と映画も、ライブも、全ての予定をキャンセルした。
よく眠り、よく食べた。
近くのカフェでケーキをふたつ頼んで、過ぎる人と暗くなる外を眺めて、
ゆっくりながら、頁を繰るのに時間をかけた。
1日がとても長く感じられた。
こんな日は、久しぶりだ。
気の合う人と過ごす時間も大切だけど、同じくらいにこの時間を求めている。
これからもきっと、そう思って過ごしていく。